最期まで使うカメラを考えた時に。Rollei35を買った話。

趣味は何かと言われれば、仕事と答えるような私ですが、写真はとても好きで、昔は少しだけ仕事でも扱いましたが、分不相応ということで、今は数少ない趣味だと言えます。

とはいえ、仕事が大部分を占める人生設計をしているため、普段からホイホイと大きいカメラを持ち出すわけにもいかず、またカメラを持つこと自体にはそこまで喜びを感じていません。

先日ついに私用のフルサイズカメラは全て自社に納付したところです。

普段はといえば仕事の合間にぱちぱちとスナップできるカメラが好きで、GRⅢXやRX100M7を多用しています。小さいのに上質な写真が撮れるカメラが好きというわけです。

写真を撮る環境を整えている最中といったところでしょうか。とにかく日常の中にカメラを溶け込ませたい、写真を自然に撮れる環境にしたいと考えています。

そんな私ですが、ほぼ初めて、様々な意味で納得したカメラを見つけることができました。初めて、カメラを持つことに対しての喜びを強く感じることができたように思います。

そんなカメラ、ローライ35です。

Rollei35について

引用:北村写真機店

フィルムカメラ愛好家、いやカメラ愛好家なら知らない人はいないように思いますが、ローライ35について紹介します。

ローライ社はドイツ・ハンブルグで1920年に設立されたカメラブランドです。

一番有名なのは、ローライフレックスと呼ばれる二眼レフカメラですかね。二眼レフカメラの源流とも言えるローライ社の代表作です。

そんなローライ社が1967年に発売開始したのがローライ35です。

当時流行していたハーフサイズカメラよりも小さく、それでいてフルサイズという圧倒的な機能美を用いたことで、発売直後からコンパクトカメラブームを巻き起こしました。

レンズはカールツァイス社、露出計はゴッセン社、シャッターシステムはデッケル社と、世界最高峰の技術を小さな筐体に詰め込んだ、まさに小さな巨人です。いや巨神か。

ローライ35にはカールツァイス社の3種類のレンズがあります。テッサーと、クセナー、ゾナーです。廉価版で販売されたローライ35Bなどにはトリオターが搭載されています。

設計はエディクサレフレックスなども手がけたハインツ・ヴァースケ。ローライ35を手がけたことで一躍有名になった、はずです。

ローライ35は写真家の愛好者もおおく、有名なところだとスティーブン・ショア、1971年にメトロポリタンで個展を写真家で初めて行った人物です。

その彼が若い時に、アメリカ大陸横断の旅に出て、その時に記録をしたカメラがローライ35だったそうです。

まぁそんなことは、ローライ35ユーザーなら誰もが知るところでしょう。

ローライ35の特徴

Photo by Rollei35

コンパクトカメラが好きな私なわけですから、この源流コンパクトカメラには昔から興味を抱いていました。見た目がとにかくタイプ。こんなに関心をそそるカメラは見たことがありませんでした。

ただすごく古いカメラなわけで、使い方は色々と難しいところもあります。

まず、当たり前ですがフィルムカメラです。フィルムの値段はどんどん上昇して、商品も減ってきています。しかし国内でも新しいメーカーが販売をしたり、若い人達がフィルムカメラに関心を持ったりして、持ち直しているところもあります。

このカメラの難しいところはフィルムであるところではなく、何よりも大変なのは目測式であることでしょう。目測式とは簡単にいえば距離を自分の目で測り、カメラの距離表示を合わせて撮影をする方法です。

ファインダーもすごく見やすいですが、いってみればただの窓です。その中にピントのシステムが組まれているわけではありません。

次に、アナログの露出計をみて露出をカメラで設定する仕組みです。優秀なゴッセン社の露出計がついてるとはいえ、現代のカメラを使っている人からしたら疑心暗鬼になりそうです。

つまりこのローライ35は、撮影をし終わって、フィルムを現像して、印刷されたものかデータスキャンしたものを目で見るまで、露出とピントがどうなっているかわからない。そういうカメラです。デジタルカメラに慣れてると、めちゃくちゃ面倒臭そうと感じ人もいるかもしれません。

ではなぜ、ローライ35なのか

Photo by Rollei35

まず、私の個人的な感覚ですが、「捨ててしまうものは買いたくない、持ちたくない」というところがあります。

現代人なので、どうしたってゴミは出します。でも毎日出すゴミを見るたび、川底の汚泥のようなどろっとした心理的ストレスをずっと感じてしまいます。

なので、極力買わないものは多いです。収集してしまうものもありますが、、必要なものであっても、物が増えることのストレスの方が大きく嫌厭してしまうとことがあります。

デジタルカメラの悲しいところは、電子部品が多いことです。電子部品は製造が終わってしまうと、壊れても修理ができなくなります。そこにどうしても違和感や、写真を撮る環境として迎え入れた時に、今ひとつ気乗りしなくなってしまうんです。病気ですね。

フルマニュアルのこのローライ35は電池がなくても写真は撮ることができます。部品は金属で組み上げられ、耐久性も高いですし、治そうと思えば治せる物が多いです。ほぼ一生使うことができるとも考えられます。フィルムが無くならなければ。。

それであればライカでもなんでも、他のフィルムカメラでも良いです。でもローライ35が良かったのは、コンパクトであるところですね。

私は今までカメラをもつこと自体の喜びは感じたことがありません。写真の描写が素晴らしく良いことも、一番重要なことではありません。

どちらかといえば、写真を撮る環境が日常に溶け込みやすいこと、つまり携帯性が重要でした。普段から持ち歩いて、シャッターを切る回数が増えること。それが一番自分にあっていると思っています。その点だけで言えば、コンデジでいいわけですが、前述の電子部品のところに、どうしても引っ掛かりを感じてしまうのです。これは、あくまで主観的な話です。

ローライ35は手のひらサイズです。GRなどと同じような大きさ。このコンパクト性に強く惹かれました。

そして、なによりもデザインが秀逸。はじめて、カメラを持つ喜びを感じることができると思いました。デジタルにどこか感じる後ろめたさや、心の澱みのような、ひっかかりがなくなって、スムーズな写真環境が整うと思ったわけです。私自身の身体性に合っている感覚があって、数年前に見た瞬間に、これだ!と思っていました。

ローライ35を探す旅

Photo by Rollei35

そんなこんなでローライ35には目をつけていたのですが、だいぶ古いカメラですからね。状態の良いものはそうそう見つからないわけです。どこか凹んでたり、露出計がおかしくなってたり、カビてたり。

そこで私は考えました。ローライ35には限定モデルが何種類もある。それだったらコレクターズアイテムとして、あまり使わずに保管していた個体が結構あるのではないだろうか、と。

そこからはローライ35の限定モデルに的を絞って探し始めました。このカメラはずっと使っていきたいと思っていたので、そう安易と手は出さず、知り合いのカメラマンからフィルムカメラを借りたりして、気長に探していました。そしてとうとう、巡り会うことができました。

Rollei35Platin

私が手に入れたのは、ローライ35プラチナ(Rollei35Platin)。1986年に444台だけ製造された、珍しいモデルです。レンズはゾナーが据えられており、ローライ35Sと同じものになります。

アンティークカメラショップで、ヨーロッパから仕入れてきたもので、見た瞬間についに私のローライ35探求の旅が終わったと思いました。そして、私の財布の中身も終わりを告げました。いやー、高かった。

Rollei35Platin

信じられないくらいの好状態を維持していて、機能面は全く問題がなく、外見の傷もないに等しい状態です。ピカピカでした。よくこんなのがあったな。。と。

知り合いの写真付きには「保管して使うな」と言われました。

ですが残念、私はこれを使うために買ったので、遠慮なくガンガン使っていきます。ガンガン使うけれど、丁寧に、大切に、最期まで使えたらいいなと思います。

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